
- ワニのパラドックス、もしくはワニのジレンマ
これは、「ワニのジレンマ」ともいわれるものです。
ジレンマとは対立する状況により板挟みになった状態を指し、パラドックス(矛盾)のうちのひとつです。
このパラドックスは「不思議の国のアリス」の作者で知られるルイス・キャロルが創作したものです。
どういうものか順に解説していきましょう。
- 人殺しのワニ
ナイル川の河岸で人食いワニが子供を人質にとり、
その母親に「自分がこれからあることを実行する。何をするか言い当てたら、子供を食わないが、不正解なら食う」と言いました。
これに対し、母親が「あなたはその子を食べるでしょう」といった場合、
ワニはジレンマによってどうしようもなくなってしまうというものです。
ワニがこれから子供を食べようとしていた場合、「子供を食べる」ということを実行しなければなりません。
ですが、「子供を食べるでしょう」という母親の予想は正解しているので子供は食べてはなりません。
「あることを実行する」というルール上、子供を食べなければなりませんが、
「正解したら子供を食べない」というルールによって子供は食べてはいけません。
食べなければならないが、食べてはいけない。このジレンマによってワニはどうしようもなくなってしまいます。
ワニが「子供を食わない」ということを決め、それを実行しようとしていた場合を考えてみましょう。
ワニは「絶対に食べない!」という誓いを立てました。
そして母親の予想は「子供を食べるでしょう」というものでした。
母親の予想は外れていたので、ワニは子供を食べなければなりません。
しかし、「絶対に食べない!」と決めているので食べることはできません。
食べないが、食べなければならない。このジレンマによってワニはまたどうしようもなくなってしまいます。
- 類例
似たようなものにこういうものがあります。
「ある橋を渡って向こう側に行くには、その目的を報告しなければならず、
それが嘘だった場合には絞首刑に処せられることになっている。
真実であるならば絞首刑にしてはならない。
ところがある男が「私は絞首刑になるためにやってきたのだ」と言ったため、どうしていいかわからなくなった」。
絞首刑になるためにやってきたというのは嘘偽りない目的です。
なので処刑人はこの真実を言っている男を絞首刑にすることはできません。
しかし、この男の望み通り、彼を絞首刑にするためには彼が嘘をついていなければなりません。
ですが、彼の「絞首刑になりたい」というのは嘘ではありません。
どうすればいいのでしょう。これもまたジレンマのひとつです。
ジレンマといえば「ヤマアラシのジレンマ」が代表的なものだと思います。
「ヤマアラシのジレンマ」については別の記事で解説していますので、そちらを読んでください。
しかしこちらの「ワニのパラドックス」もそこそこ有名なものですので、ぜひ覚えてくださいね。